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(1) 遠つあふみ大河ながるる國なかば菜の花さきぬ富士をあなたに
(初出 「明星」 明治38.4 『舞姫』 明治39.1)
〔遠つあふみ〕(遠淡江)浜名湖の古称。
都から見て近い淡江(湖)が近江、遠い淡江が遠江(とおとうみ=とほつあふみ)である。
*大河、すなわち天竜川の畔に立ち富士をかなたに望んで見ると菜の花が咲いている。
(佐藤 智洋)
(2)富士の山濱名の海の葦原の夜明けの水はむらさきにして
(初出「中学世界」明治38.6 『舞姫』明治39.1)
〔葦原〕葦の原っぱ。
*日の昇る頃に浜名湖を散歩する。すると水面が青紫色に染まってとても幻想的である。
(同上)
(3)風がふなばたに来てをかしげにゑみくつがひる大井川かな
(初出「学生文芸」明治43.11 『一葉二葉』)
〔ふなばた〕舟の両側のへり。
*朝の風が大井川を渡る舟のふなばたまで来るといつのまにか笑みがこぼれてしまう。
(同上)
(4)方廣寺空をかぎりて立つもとに鐘打つ家の小さきともし火
(初出「早稲田文芸」明治44.1 『草の下萠』)
〔鐘打つ家〕方廣寺の鐘を打つ男の小屋。
*夜、外に出てみると、鐘を打つ男の小屋からこぼれるほのかな明るさに温もりを感じる。
(同上)
(5)奥山の木立のごとし夜の閨死にに来よとぞ泣きに来よとぞ
(初出「婦人画報」大正3.5『さくら草』大正4.3)
〔閨〕婦人の部屋。
*かつて訪れた(明治43〜44年頃か)奥山の木々の闇が思い浮かぶ。
そのような闇の閨に死にに来なさい。泣きに来なさいという声が聞こえてくる。
(同上)
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