月のひつじ
【 レビュー 】

1969年7月21日、人類初の月面歩行の映像が全世界に配信された。  その映像を地球で受信したのはオーストラリアの片田舎パークスの牧草地にぽつんとそびえる南半球最大のパラボラ・アンテナだった…

原題の「the dish」とは「お皿」のこと。 町の人たちはパラボラ・アンテナを愛情を込めてこう呼んでいました。  アポロ11号のアームストロング船長が月面に降り立つ姿を生中継するためにこんなエピソードがあったんですね。 この作品ではじめて知りました。

オーストラリア首相も「羊しかいないのに…」とつぶやくぐらいのど田舎に何でこんなでっかいアンテナが建っているのかというと、 町長の思いつきで誘致が行われました。 今だったら国後島の「ムネオ・ハウス」ばりに突き上げを食らうことでしょう(笑)  建設当初は「売名行為だ!」「無用の長物だ!」とあまり評判のよくなかったこのアンテナが、全世界の注目の的となり、町の、いや国の誇りとなっていく過程が、 ほのぼのと描かれていました。

この世界的なビック・プロジェクトを成功させようと所長(サム・ニール)以下2人の所員とNASAの派遣職員が奮闘します。  でも、お国柄か、それとも都会と田舎のズレのせいか、所員たちは実にマイペースに仕事を進めていきます。  そんな彼らと重責にピリピリするNASAの派遣職員とのやり取りが、なかなかおかしかった。  それに町長をはじめ、町の住人たちも大変なことが起こっているという自覚はあるものの、の〜んびりと「その時」を待っている姿もユーモラスでした。

特に大事件があったわけでも、大事故が起こったわけでも、ましてや銃撃戦や殺人があったわけではなく、 ごくふつーに物語が、どちらかと言うと淡々と流れていきますが、面白かった!

所員と町一番の美人との若干のラブ・ストーリーがさり気ないエピソードとして添えられていたのも微笑ましく、 町長の子供がこれを機会に科学に興味を持ち、大人顔負けの解説を入れるところとかも、なかなか良かった。

ふっと気が付くと、この作品には「悪者」というのがひとりも出てきませんでした。  これがアメリカの映画だとネガティブなことを言って不安を煽ったり、嫉妬して妨害する者や、 これを機に出世を考える輩とか「マイナス」の要素が「必ず」ありますが、この作品ではとにかく「素朴で良い人」ばかりが物語を進めていきます。  事実に基づいた物語だから当然かもしれませんが、こんな作品が成立してしまうのは、少々驚き。  でも「あのころ」って世界中の人々が同じ夢を見て、その夢に向かって「ひとつ」になっていたんだなと思うと、ちょっとばかり羨ましかったりします(^^ゞ

…ハリウッドの
ラブ・ストーリーに飽き飽きしてきている、あなた
戦争映画にウンザリしてきている、あなた
スリラーに恐怖を感じなくなってきている、あなた
サスペンスに緊張しなくなってきている、あなた

そんなあなたは必見です!

胸がホッとして、めちゃハッピーなお話でした。

日付
メディア
評価
2002/07
映画館
☆☆☆☆★