6BX7GTpara全段差動プッシュプルアンプ

 

  

前書き

 ぺるけさんの「Building My Very First Tube Amp講座」に触発されて、全段差動アンプ第2段の製作を始めたのは良かったのですが、ちょっと欲張りすぎた事もあって見事に玉砕。残った部品を活かすべくミニアンプ(50BM8)と講座標準シャシ(ぺるけさん設計、善本さん製作)使用アンプの2本立の展開により再起を図ることにしました。標準シャシアンプに使う真空管は、購入済みの6SC7と6BX7GTがあるので再利用に決定です。片チャンネルに各1本、全部で4本の球でメインアンプが出来ますが、標準シャシは6本の球が実装可能です。バリエーションは色々と考えられますが、6BX7GTを片チャンネルに1本使用した構成では、実装可能な電源トランスの容量に余裕がありすぎてもったいない。そこで6BX7GTの両ユニットを並列にして片チャンネルに2本使用して、出力の増強を測ることにしました。

 6BX7GTと言う球は、片ユニットのプレート損失が10Wあるが、発熱量の関係から両ユニット合計で12Wとの制限があります。1本を純A級動作の差動プッシュプルに使用すると、片ユニットのプレート損失を6W以下に抑える必要があります。(それでもかなり熱くなるので、現実的にはもう少し低くした方が良い。) そこで両ユニットをパラにしてプレート損失12Wで設計し、出力増大を目指すのですが、実は単ユニットのみを使い、2本でプッシュプルを構成する手もあります。(プレート損失は10W取れるし、エミッションが減少したら、遊んでいたユニットを使えば良い? ので長寿命になる!?!?)

 出力管を並列使用するメリットとデメリットは、

   1. 内部抵抗が減少するので、低域特性とダンピングファクタが向上する。
   2. プレート損失が増えるので出力の向上が図れる。(これは今回該当しませんが)
   3. ドライバ(今回は初段)管の負荷容量が増大するので、高域特性が劣化する。
   4. パラユニット間のバラツキ補正のため回路に工夫が必要となる。

と言ったところでしょうか。この中で特に懸念されるのが、3の高域特性の劣化です。今回製作する初段+出力段の2段構成のアンプでは、初段でゲインを稼がなければならず、出力インピーダンスが大きくならざるをえません。このため出力段の入力容量(=初段の負荷容量)が大きくなることの影響は無視できないものがあります。

 でもとりあえず作って見ましょう。どうにもならなければ、単ユニットのみ使えばよいのだから。

 

設計

 設計と言っても、基本回路はぺるけ式標準シャシアンプです。後は自分の好みに応じてアレンジを加えます。ここではそのポイントを記述しておきます。

   1. 出力管は6BX7GTの両ユニットを並列にして使用する。初段管も購入済みの6SC7(メタル管)を使用する。
   2. 出力管の並列ユニット間のバランス調整は設けない。(電流バランスが狂っても片ユニット10W損失許容なので壊れない)
   3. 出力管のバイアスにはC電圧を使用した固定バイアスを併用し、定電流回路に掛かる電圧を低くして、発熱の低減を図る。
   4. 出力トランスはタンゴ(ISO)のFE−25−5を使用し、2次側4オーム端子に6オームスピーカを接続する事により、1次側
     7.5kΩp−pのトランスとして使用する。
   5. 電源トランスにはノグチのPMC−190Mを使用する。平滑回路にはチョークコイルを使用して、発熱低減を図る。

 出力段の動作点は(後で単ユニット動作に変更する事も考慮して)、Vp=230V、Ip=42mAとします。プレート損失は9.7Wです。ロードラインからは(両ユニットのバランスが完全なら)Vg=0V時のIpが86mAと読みとれるので、全段差動アンプの設計の定石(Vg=0Vの時のIpが動作点の2倍[=定電流回路の設定値])を、ほぼ満たしています。初段はプレート抵抗220kオーム、Ip=0.55mAと基本回路そのものです。

 

製作

 シャシの穴開けがないと、こんなにも楽なのかと言った感じで、製作は進みました。各部の電圧チェックも問題なくクリアし、スムーズに音出しにこぎ着けました。シャシ内部の様子を以下に示します。

 

 メインの回路はいつもの通り、ユニバーサル基板に部品を搭載しました。標準シャシの到着前に部品配置を決め、製作を始めていたのですが、その時は初段管をシャシの両サイドに配置するつもりだったので、基板上の部品配置もそれに適したものにしたのですが、実際にシャシに部品を搭載してみて気が変わり、初段管を中央に持ってきたので、ちょっと変なところがあります。電源回路は平ラグ板に組んでいます。トランスの左側がB電源、右側がC電源です。出力トランスの側にある8pの平ラグ板は6BX7GTのプレートと出力トランスを結ぶジャンパ端子です。これを外せば、簡単にパラから単ユニット動作になります。

 

調整

  とりあえず音が出たので、気になる周波数特性を測ってみました。結果は愕然! なんと高域の3dB低下点が17kHzです。あまりの狭帯域に言葉も出ません。予想以上に入力容量が大きいようです。この特性では恥ずかしくて人前に出せません。音にも影響があるはずです。なんとか改善策を考えなければなりません。考えられる対策は、

   1. 出力段を単ユニット動作にする。 ⇒ 入力容量が半分になる。
   
2. 初段管をrpの低い物に交換する。 ⇒ 出力インピーダンスの低下が見込まれる。
   3. 初段をSRPP構成にする。 ⇒ 出力インピーダンスの低下が見込まれる。

と言ったところですが、3は新たな真空管を組み込むスペースがありません。2は適当な球がありません。(規格表を見ていると、μが同程度でrpが1/5程度の物はあるのですが、ロードラインを引いてみると実際の動作点では特性の寝ている部分を使うことになるため、規格表通りの性能は期待できません。この手の球で所定のμを得ようとすると、Ipをかなり流さなければならず、そのためには負荷抵抗を小さくしなければなりません。) 1は試してみたのですが、今度は低域の力強さがちょっと減少するようです。こうなったら、ドライブ管を中μでrpの低い球(例えば6SN7GT)にして、初段にFETアンプを追加して3段構成にするしかなさそうです。

 そんなおり、Tube Amp講座の掲示板で、OKUさんにクロス中和と言う手法を提示して頂きました。プッシュプル増幅のプレートから反対側のグリッドを微少容量で結んでやり、ミラー効果による入力容量をうち消す方法です。僅かコンデンサ4個で出来る改善策です。

 そこでさっそく実験です。6BX7GTのグリッド−プレート間容量は両ユニット合計で8.2pFとなっていますから、8.2pFと少し控えめな5.1pFを用意しました。まずは5.1pFで試してみます。確かに効果はありますが、あまり大したことはありません。そこで思い切って両方を並列にした13.3pFとしてみました。かなり高域が伸びてきました。音も高域の躍動感が増しています。その後、更にコンデンサを追加購入して試してみました。22pFだと3dB低下点(無帰還)は56kHzにまで伸びましたが、帰還時の超高域のレベルが無帰還時を上回る現象が出ました。10kHzの方形波を入力して純容量負荷でも発振はしていないのですが、恐らく過剰補償だと思われます。そこで容量を18pFにして最終決定としました。

 並列動作で一応満足のいく特性が得られたので、単ユニット動作はありません。そこで動作点をちょっと変える事にしました。電源トランスのタップを変えてプレート電圧を255Vに上げます。ロードラインは25V分シフトするだけで、動作電流は42mAのままですから、バイアスが深くなるだけで出力増強効果は望めません。それでも動作点を変更したのは8Ωスピーカを接続した時にちょっと有利になるからです。

 結局、回路と各部電圧は以下の様になりました。

 

特性の測定

 測定機材はそろっていないのですが、なんとか工夫しながら測った結果がこちらにあります。なお概要は以下の通りです。(6Ω負荷)

  

L ch

R ch

総合利得(無帰還)

7.33 (17.3dB)

7.94 (18.0dB)

負帰還量

2.3dB

3.0dB

総合利得(帰還後)

5.62 (15.0dB)

5.62 (15.0dB)

ダンピングファクタ(1kHz、無帰還) 2.58 2.85
ダンピングファクタ(1kHz、帰還後) 3.70 4.29
残留雑音(帰還後、無補正)

0.22mV

0.22mV

最大出力(1kHz、歪み5%)

5.2W

5.6W

最大出力8Ω時(1kHz、歪み5%)

 6.2W

 7.5W

消費電力

98.4VA (AC 104.3V)

 


 

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