宇田浩一さんとRenault Alpine V6 Turbo


今回は試乗会の場所をお台場の船の科学館付近に選んだ。周辺の工場に出入りする大型車でごった返すであろうこの界隈も、土日は静かな佇まいを見せる。都合により交換試乗会は行わなかったが私がいろいろな方々のいろいろなルノーに同乗させて頂いたのでその模様をお送りする。

最初に乗せて頂いたのは組合員の宇田浩一さんのアルピーヌV6ターボである。

アルピーヌV6ターボはA310の後継車として1985年にデビュー。エンジンはPRVユニット(プジョー、ルノー、ボルボが3社共同で開発したエンジン。90°V62.8リッター。プジョー505、ルノー25、ボルボ760等に搭載)をショートストローク化して圧縮比を下げ、ターボ化したものを縦置きにリアに積んでいる。

シャシーや駆動方式こそれっきとしたスポーツカーの物であるが、エンジンの生い立ちは乗用車上がりのものである。日本でいえばレジェンドのエンジンをVTEC化したNSXも同様(NSXはレジェンド同様横置き)であるが、果たしてそんなアルピーヌV6ターボはどんな車なのであろうか。

 

ノーズが低くリアにかけてふくらみを持つシルエットはまさにリアエンジン車の物である。コックピットのヘッドクリアランスは十分である。助手席側には物入れも備わっており、巷でよく言われるようにA310に比べフツーの車というかフツーのルノーに近いが(つまり十分に変わった雰囲気の内装を持つ車ではある)、サイドブレーキはシフトノブと反対側に付けられており、さりげなくスーパースポーツであることを主張している。サイドシルが横方向に分厚く、シートも低いので乗ると戦闘機(乗ったことはないが)に乗っているような気分である。ステアリングの代わりに操縦桿が生えていても何も違和感はないであろう。平均的体型の日本人では運転席から長いフロントノーズは見えない。リアも直接見ることはできないので駐車には慣れが必要であろう。パワーステアリングはない。クラッチはそれほど重くはない、というレベル。ウインカーはピ、ピ、ピ、と言う。まるで病院の心拍計のような音だ。

意外だったのがリアシートの居住性である。車高が高くないので乗り込むのは少々大変だが、身長170cmの私の頭は天井にかすりもしなかった。全高の高いV6エンジンをリアにオーバーハングさせて積み込む為に、リアをハイデッキ化しているからであろう。4人で移動することも十分出来るリアシートだが、問題はラゲッジスペースが無いことだ。スペアタイアはもともとはエンジンの真横に置いてあるのだが、熱で持たないので宇田さんはフロントに移動してしまっている。宇田さんは息子さんをこの広いリアシートに転がして育てていらっしゃるそうだ。

さて、私をそのリアシートに積み込んでV6ターボが走り出す。宇田さんの手により、V6エンジンが躍動する。

V6エンジン特有の共鳴音を生かしたサウンドは、助手席にいると痛快な排気音が目立つが、リアシートでは駆動系のノイズと振動が直に体に伝わって、”化け物感”を感じる。エンジン直上まで回り込んだグラスハッチがそれらを反射してくるからであろう。どちらかというと後ろにいるときの音が、この車の本性なのではないか、と私は思う。こんなリアシートで育つ宇田さんの息子さんは将来一体どんな大人になるのだろうか。今から楽しみである。

テンポよくシフトアップしながら加速する。かなりの加速感だ。ブースト計は2000回転あたりから徐々に立ち上がる。ターボエンジンの暴力的な加速と言うよりは、排気量の大きさを感じさせる走りをする。

宇田さん:これで120km/h位。150km位までは一瞬ですね。

速度感を感じない車だ。

宇田さん:シュワーン、シュワーンって宇宙船みたいでしょ。これでね、公称200か185馬力なんですよ。本によっては日本仕様は185って書いてあるんですよ。国産の280馬力の車って乗ったときあります?

ぼるたな:ないですね。

宇田さん:どんな世界なんでしょう。280馬力の世界は。

日本の車づくりに対する皮肉にも聞こえた。

ぼるたな:1000回転をちょっと越えたあたりからでもちゃんと加速しますね。

宇田さん:低速がすごくあるから、普段は2000も回していれば足りちゃいますね。ほんとにね、元のエンジンが実用エンジンだから、実用エンジンにターボを付けただけだから、ほんとに実用的ですね。

低速トルクを生かした丁寧な発進をする宇田さんだが、発進するやスロットルをべったりと踏み込み、コーナーではステアリングを持ち替えながら重いステアリングと戦っている。相当なスピードだ。運転している人間はともかく、助手席にいる人間としてはふつうの車だったら相当な恐怖を伴うであろう。しかし、このV6ターボは違った。ボディ剛性が猛烈に高いような印象は受けないが、ロールは極少なく、助手席から見る風景はF1のオンボード・カメラのようであった。

ぼるたな:隣にいるのに気持ちいいんですよ。ふつうの車だったらたぶん、もう怖くって頭がグラグラしちゃうと思うんですけど、この車はすっごくソリッドな感じですね。カートって乗ったことないけど、こんな感じなのかな、って思います。こんなに速いスピードでこんなに隣で安心していられたのは初めてです。いや、感激しちゃいました。

宇田さん:仲間に入ってくださいよ。ちょっと頑張れば、そんなに他の車と値段はかわんないですから。安いと思いますよ、V6ターボは今。ポルシェ並の迫力で値段は半分以下ですからね。維持費もそうかかんないだろうし。

ぼるたな:また欲しい車が増えてしまった。

地面にへばりつくような乗り味も凄いと思ったが、リアエンジン車ならではのノイズ、これが「俺がこの化け物を動かしているんだ」という充実感をもたらす車だと思った。

アルピーヌV6ターボの現在の相場は150万円〜300万円('88〜'91)。同じ年式の911カレラ2が350〜500万円する事を考えると、確かに値段は半分以下である。リアエンジンのスーパースポーツの購入を考えている人はアルピーヌV6ターボをターゲットに入れてみてはいかがだろうか。


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