近鉄大阪線・上本町駅9時40分発青山町行き急行に乗る。
 10時35分・室生口大野駅に着く。20人くらいの人が降りる。駅前から室生寺行きのバスが出ているが、もちろん乗らない。今日は、全コースを歩くのだ。

渓谷美の深谷川(竜鎮川)を室生寺へ

 駅前の広場を抜けてアスファルト舗装のバス道を5分ほど歩くと、正面に宇陀(うだ)川。道路は川に沿って右にカーブする。右手前に大野寺があり、川の流れの対岸には有名な大弥勒磨崖仏。かなり風化してしまったのか、光線の具合か、よく眼を凝らさないとほとんど見えない。前に来たときはもう少しはっきりしていたような気がする。帰りにゆっくり見るとして宇陀川沿いの道路を急ぐ。
 宇陀川沿いにしばらく行き、国道165号線の高架下をくぐると室生路橋のたもとに、「右女人高野室生寺・左弥勒大石仏大野寺」と彫られた石標が立っている。

 橋を渡り、左に柱状節理の岸壁がそそり立つなだらかな坂道をしばらく進む。駅から約1.2km行ったところでバス道から右に分かれ室生ダムへの道に入る。途中は桜並木の上り坂で、ひんやりとした空気が心地よい。右上方に宇陀川をせき止めた室生ダムが見えてくる。
 左に柱状節理、右にダムの水(室生湖)を見ながら、しばらく歩くと赤い欄干の竜鎮橋に出る。

 橋を渡ると正面にネットをかぶった大きな岩があり、道が左右に分かれる。右は湖沿いに榛原方面。左の深谷川(竜鎮川)に沿った細い砂利道を行く。すぐに、石畳の山道になる。300mほどで左下の竜鎮川の岩の上に鳥居が見える。川原に下りてみると対岸の岩の途中にに小さな鳥居と社がまつってある。竜鎮神社である。すぐ右手上流に水が岩肌を撫でるように滑り落ちる竜鎮滝がある。とにかく水がきれいで滝壷の底まではっきり見通せる。また、滝壷は大きな岩が滝の水で剔られてできたのであろう、何とも言えないなめらかな曲線が美しい。この渓谷の岩は、柔らかいのか、どれも角がなく丸みをおびている。

 竜鎮滝からの道は、渓流を縫うようにして沢を渡りながら伝うことになる。
 途中、沢蟹を見つけたりしながら、およそ2kmくらい歩き、川原の岩の上で持参の弁当を広げ昼食にする。手を洗った川の水は冷たく透き通っていて、小さな魚があちこちに泳いでいるのが見える。渓流の清冽さでは一級品で、周りの紅葉の彩りが冴える。
 そこから1kmほどで沢歩きは終わり、少し道幅の広い林道になり平坦な道がつづく。周りは一面の桧・杉林となる。

 スタートから約7km地点が天王橋、国定公園の標示がある。右は室生古道を経由して仏隆寺への道。左に橋を渡り、深谷川と別れる。
 150mぐらい歩いたところに4体の素朴な石仏が並ぶ。坂道を少し下ると茅葺きのお堂があり、中には腰から二つに折れた珍しい地蔵(腰折地蔵)がまつられている。この地蔵は腰痛や下の病気にご利益があるらしい。
 腰折地蔵の前でようやく視界が開け、箱庭のような室生の里を一望に見下ろすことができる。前方にこんもりと茂った室生山と対面し、竜のようにくねった室生川も見えてくる。摺鉢状の室生の里は、昔の風情が残るのどかな山里。車道を避けて細い急坂を下り、道端の石仏や、農家の庭にある柿の木に目をやりながら斜面を下ると川沿いの道に、旅館や食堂、土産物店が並ぶ。バスでの参拝客なのだろう、人通りが多くにぎやかである。室生川に掛かる赤い太鼓橋を渡ると正面に室生寺の表門。

 室生寺は、役行者が開いたと伝える古寺。長らく真言密教の道場として栄えた。柿(こけら)葺きや桧皮(ひわだ)葺きの堂塔が室生山(如意輪山)中腹に立ち並ぶ。諸仏像のほとんどが国宝・重文。現存するものではわが国最小と言われる五重塔は、限りなく優美な姿を見せる。

  

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