人工天体の紹介と観望のすすめ
  天体観測を行う方々はきっと人工衛星を見たことがあると思いますが、人工衛星を観望対象にしたり更にはそれを趣味に
  される方はあまりいらっしゃらない様ですね。私も趣味といえる程熱心に観望している訳ではありませんが'90年に人工衛星
  の出現予報をしているサイトや軌道データを使用して人工衛星の現在位置や出現シミュレーションが行えるソフトの存在を
  知って機会ある毎に観測してみました。都市部でも観測可能な人工衛星もありますし、また自分の見た人工衛星が観測した
  地球などの写真やデータを見るとなんとなくうれしいものです。(HST:ハッブル宇宙望遠鏡などはその良い例です)
  ここでは、人工衛星の観測の方法や予報サイト、シミュレーションソフトの紹介、軌道データ入手方法等と、私自身が約一年間
  に観た人工衛星から比較的観測し易い(観望対象となる)ものを紹介します。

人工天体の観測方法
  人工衛星は自分では光を放っていませんから地上から視認出来る条件となる為には太陽光が人工衛星に届いていて且つ
  観測地は夜であることが必要です。即ち簡単にいえば日没後と日の出前の夫々数時間という事になります。
  又、太陽光の反射が効率よくなる条件として日没後なら東の空、日の出前なら西の空を通過する人工衛星が観測し易いと
  いえます。
  実際に見える明るさは人工衛星の形状や大きさ、軌道の高度や観測者/人工衛星/太陽の位置関係などによって違って
  きますので同じ人工衛星でもいつも同じ明るさでみえるわけではありません。
  もっと詳しく知りたい方は横浜こども科学館人工衛星情報を御覧になるといいと思います。
  又、実際の観測ではまず人工衛星を"探す"作業が必要なので殆どの場合は目視となると思います。従って目視で見られる光度
  以上のものでないと観測は難しくなります。私は目視以外にWide Bino28を使用していますが視野が広い為、目視感覚で探せる
  上、光度も目視より2等級程度低いものも見られますので観測できる対象、機会はぐっと増えます。


人工天体の出現予報サイト
  私が良く利用しているサイトはドイツ航空宇宙センターが提供している情報サイトHeavens-Aboveです。
  このサイトは初回アクセス時に自分の観測地情報を登録すれば以後は自分の観測地から見える人工衛星情報を表示してくれ
  ます。又、彗星などの情報も最新のものが提供されていますので天体観測にも役立つサイトです。
  人工衛星の出現予報は最新軌道データを使用しているようで予報の信頼度は非常に高いです(経験的には数秒程度の誤差
  です)
  このサイトで予報入手可能な人工天体はISS(国際宇宙ステーション)、HST(ハッブル宇宙望遠鏡)、4.5等級以上で観測可能な
  人工衛星諸々、そしてミッション中であればSTS-XXX(スペースシャトル)、及びIridium Flares(イリジウム衛星のフレア)です。


人工天体の軌道シミュレーションソフト
  私はSatSpyというソフトを使用しています。このソフトはsatspy.com.で入手できます。June 30 '01で事実上事業を辞めた様なの
  で今後のバージョンアップは期待できませんがデモ版もありますし、今('01年9月1日現在)なら$19.95で入手できます。(ダウン
  ロード版のみ)但し何時入手不可になるか判りませんので各人でご確認ください。他にもいくつか試した中ではもっとも使い
  やすかっただけに残念です。
(注:2001年9月13日に完全に閉鎖されているのを確認しました)
  このソフトでは衛星の軌道データを使用し計算する事で任意の設定時間にどこに衛星がいるのかや設定観測場所からどの位置
  に衛星が見えるのかがシミュレーションできるので、現在時間で更にアニメーション設定すればリアルタイムで表示できます。
  他にも観測時間範囲や観測条件(明るさや高度など)でフィルタリングした観測可能な人工衛星のリストを抽出したりできます。
  光度も視位置によってちゃんと変わりますし、前述のHeavens-Aboveの予報と比べても殆ど差がありません。
  又、恒星、惑星、太陽、月のデータも入っていて星図代わりにも使えます。
  2002年1月27日追記:現在SatSpyと同等のシミュレーションソフトを探しています。いくつか試したのですが、いまいちな
  ものしか見つかっていません。どなたか"これがいいよ"なんて情報があればお教えいただきたく。
  また、SatSpyの正規購入者の方で2002年1月1日より突然デモモードになって困ってらっしゃる方がいるかも知れませんが、SatSpy
  サポートにメールで名前とキーコードを送れば更新キーコードを発行してくれますので、一応お知らせしておきます。

  ところで、精度の高いシミュレーションを行う為には最新の軌道データを入手する必要があります。管理された静止衛星はともかく
  地球を周回している衛星は各種観測などを目的にしているものが多いので軌道の変更や軌道維持のための制御が行われる為
  です。又、観測可能な衛星の中には既に稼動していないものや打ち上げに使用したロケットも含まれているので最新のデータ入手
  は必須な訳です。
  一般に人工衛星の軌道データとして"Two Line Element"が使用されます。TLEは下記の様なフォーマットで書かれたTEXTデータ
  です。
   1 AAAAAU 00 0 0 BBBBB.BBBBBBBB .CCCCCCCC 00000-0 00000-0 0 DDDZ
   2 AAAAA EEE.EEEE FFF.FFFF GGGGGGG HHH.HHHH III.IIII JJ.JJJJJJJJKKKKKZ
      A:衛星のカタログ番号 B:元期 C:減衰率(2分のn-dot) D:要素番号 E:傾斜角 F:昇交点赤経
      G:離心率 H:近地点引数 I:平均近点角 J:平均運動 K:軌道周回数 Z:チェックサム
  このデータはsatspy.com.でも入手できますがここで入手するのが一般的な様です。更新は2〜3日毎に行われますが
  スペースシャトルのミッション中は頻繁に書き変わります。

比較的観測が容易な人工天体
  以下は私が'00年5月1日〜'01年7月15日までに観測できた人工衛星の中で比較的見やすかったと思われるものをリストアップ
  したものです。ちなみにこの期間中にみた人工衛星はのべ162基で(同定できたものだけです)そのうち自宅からの目視でみた
  ものは約70基です。

衛星名 観測回数 光度 備考
Cosmos1833Rocket 2 3.5程度  
Cosmos1980Rocket 2 3.4程度  
Cosmos2263Rocket 3 3.4程度  
Cosmos2297Rocket 2 3.5程度  
Delta2Rocket 3 3.5程度 同じものを3回見ている訳ではなく名前が同じなだけだと思います。
GPS 2-27 Rocket 3 3.4程度 同上
HST 7 2.7〜4.0程度 予報よりいつも明るく見える感じがします。
Iridium6、7、8、9、10、12、15、26、34、
42、45、52、57、63、76、80、81、86
21 0〜-8.0程度 何れも所謂"フレア"です。
ISS 9 0程度 STS合体時は非常に明るいです。
Lacrosse2、3、4 7 2.5程度  
MIR 8 0程度 ご存知の様に大気圏突入により廃棄されてしまいました。残念!
SL-16Rocket 11 3.0程度 これも同じ名称のものがいくつもある様です
TRMM 6 1.5程度 日本の熱帯降雨観測衛星です。
UARS 3 3.0程度  
STS 2 1.0程度 暫くはISS建設関連のミッションが多い為、タイミングによっては
ISSとのランデブー飛行がみれます。

上記の中でもHST、ISS、TRMM、STS-XXX、とIridum(Flare)は空の明るい観測場所でも楽にみる事が出来ると思います。
特にIridium衛星のFlareは最大で光度-8等級にもなりこれは日中でも観測可能だそうですので(私はまだ見たことがありませんが)
是非チャレンジしてみてください。説明が遅れましたがIridium衛星は全地球規模をカバーする携帯電話サービスを行う為の衛星で
(事業破綻したため現在はサービスはしていません)3枚の大きなアンテナパネルをもっており、これに太陽光が反射しその経路上では
短時間だけ非常に強い反射光を観測することができます。一度御覧になればその明るさに驚く事でしょう。
又、私の経験では似た様な現象が他の人工衛星でも稀に観測できる事があります。

ギャラリー
 まぁ、見ていただいてもただの線なんですが・・・。

HST(ハッブル宇宙望遠鏡)
2001年4月22日 19:40JST
OLYMPUS CAMEDIA C-3040 ZOOM
F=1.8 最広角側(35mm版でf=35mm相当)
ISO400 10秒露出
ISS(国際宇宙ステーション)
        +
STS-100(スペースシャトル)

     ドッキング中

2001年4月22日 19:59JST
OLYMPUS CAMEDIA C-3040 ZOOM
F=1.8 最広角側(35mm版でf=35mm相当)
ISO400 10秒露出
MIR(ミール)
2001年3月11日 18:55JST
OLYMPUS CAMEDIA C-3040 ZOOM
F=1.8 最広角側(35mm版でf=35mm相当)
ISO400 16秒露出×2コンポジット

Iridium26(Flare)('01/10/20追加)
2001年10月20日 17:54JST
OLYMPUS CAMEDIA C-3040 ZOOM
F=1.8 最広角側(35mm版でf=35mm相当)
ISO400 16秒露出

この時は予報光度-8等級と、ほぼ反射光の
中心位置での観測でした。
電柱のやや右上の星が火星で、この日の
の光度は-0.1等級でしたから、いかに
明るいかがお分かりいただけると思います。



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