「幸 せ の 花」 

札幌市中学校文化連盟「にれ」第四十三号掲載作品

村松 麻衣子 作

外は、うす暗くなり雪が降り始めた。今日は、12月24日、クリスマス・イウ゛。
「はぁ−」
大道りに面して建っている病院の窓から外を眺めていた真理は小さなため息をついた。
「本当だったら今頃は、家でクリスマスパ−ティ−をしているはずなのに。」
真理は小学校4年生 。3ヶ月くらい前から、この病院に入院している。真理の家では、毎年、クリスマスパ−ティを開いていた。友達をたくさん呼んで、お母さんの手作りのケ−キやごちそうを食べたり、ゲ−ムやプレゼント交換をしたり、真理は、そんなパ−ティ−が大好きだった。今年も、ずっと楽しみにしていた。でも、今年の秋に病気になってしまい、入院してしまった。
「どうして病気になんかなっちゃったんだろう。」
そんな真理を面会に来ていたお母さんがはげました。
「先生だって、もう少しで退院できるって言っているし、元気になったらパ−ティ−開こうよ。」
「来年のクリスマスまで待てないよ・・・・・。」
真理は、つぶやいた。そのとき、病院に静かに放送が流れた。面会時間終わりの合図だ。
「じゃあね真理。あすまたくるから・・・・・。」
そう言ってお母さんは、荷物をまとめて帰っていった。
その後、真理は、また外をながめていた。
外はすっかり暗くなり人も車もだいぶ少なくなっていた。「みんな今頃プレゼントもらっているのかな。」そんなことを考えながら、ふっと外を見上げた。その時だった。ふいに外がまぶしいほどに光った。その光は、真理の体もつつみこんだ。
「いや−。誰か来て−。」
真理は怖くなって叫び、必死で目をつむった・・・・・。
どのくらい時間がたっただろう。真理は、恐る恐る目を開いた。
最初に目に映ったのは、きらきらと輝く夜空だった。
「きゃあ!私、空を飛んでいる。」
真理は思わず叫んだ
すると、
「ハハハ。そんなに驚かすかなくっても大丈夫。ここは、わしのソリの上だよ。」
と声がした。びっくりして声のした方を見ると、赤い服を着た白いひげのおじいさんがすわっていた。
「もしかして・・・・。サンタさん・・・・・?」
そのおじいさんは、にっこりと微笑んでうなずき、こう言った。
「こんばんは。真理ちゃん。」
真理は、びっくりして聞いた。
「どうして私の名前を知っているの?」
サンタクロ−スは、こう答えた。
「わしは子供の事ならどんなことでも知っているんだよ。今夜は真理ちゃんを素敵な所に連れていってあげようと思ってね。」
「素敵な所って何処に連れて行ってくれるの?」
「それは、着いてからのお楽しみだ。」
サンタクロ−スは、そう言ってソリのスビ−ドを上げた。すると、辺りがまた明るくなった。真理、もう一度目をつむった・・・・・・。
しばらくすると、サンタクロ−スの声がした。
「さぁ着いたよ。真理ちゃん。」
真理は目を開けた。そこは、美しい花々が咲く野原だった。
「わぁ−きれい。でもここどこなの?」
「ここは、真理ちゃぉんの住んでいる地球からは、だいぶ離れた所にある妖精の国だよ。」
とサンタクロ−スは、答えた。
「妖精の国・・・・?」
確かにそこは、真理の住んでいる町とは、様子が違った。建物はみあたらないし、夜なのになぜか明るかった。その時、真理達の所にきらきらと光る羽根をつけた妖精がやって来た。
「私達の国へようこそ。私は、花の精のリルルです。もうすぐ森でクリスマスパ−ティ−が始まります。行きましょう。」
そう言って飛び立った。森へ着いた真理達は、たくさんの妖精達と一緒に、歌を歌ったり、ダンスをして、遊んだ。木の実のケ−キを食べたり、バラの花びら入りのお茶を飲んだり、楽しい時は、あっという間に過ぎていった。
「さてと、もうすぐ夜が明けてしまう、そろそろ帰らないと・・・・・。」サンタクロ−スが言った。真理は、ちょっと残念だった。妖精達ともう少し遊んでいたいと思った。リルルもさみしそうに言った。
「もう帰ってしまうなんて残念ね。でも楽しんでもらえて良かった。あっちょっと待ってて、渡したい物があるの。」
リルルは花園の方に飛んでいって、少しすると花束と小瓶を真理に渡した。
「これは、私からのプレゼントよ。」
「きれいなお花。ありがとう。このお花、なんていうの?」
リルルは答えた。
「これは幸せの花っていうの。そのビンの中には、種が入っているわ。私達は、この花の種を宇宙のいろいろな惑星に振りまく仕事をしているの」
「いろいろな惑星って地球にも?」
リルルはうなずいた。そして少し悲しそうに話し始めた。
「この花はね、世界中のの人々の幸せや喜びのエネルギ−を受けて咲くの。だから一人でも悲しい思いをしている人がいると花は枯れてしまうの。今、地球ではこの花は、一本も咲いていないわ。」
真理は、びっくりした。
「一本も咲いていないの?私は、いつも喜びいっぱい感じてるよ。」
リルルは静かに言った。
「真理ちゃんだけが幸せじゃダメなの。今も悲しみや苦しみと闘っている人たちはたくさんいる。その人達みんなが本当の幸せを感じなくちゃダメなの。」
「それじゃあ本当の幸せって何?」
リルルは答えた。
「やさしさや、思いやりの気持ちを素直に受け止めて、他の人にもその気持ちを伝えることができる。そして、それが世界中に広がった時、みんなが本当の幸せを感じることができるわ。」
そして、リルルは、ニッコリほほ笑んで言った。
「私、信じているわ。いつか地球が幸せの花でいっぱいになる日が来ることを・・・・・。」
「私も信じているわ。これからは、小さなやさしさを大切にする。そしてこの種、大切に育てる。絶対花を咲かせるわ。ありがとうリルル。」
リルルは嬉しそうにうなずいた。サンタクロ−スも言った。
「真理ちゃん今、君は本当に大切なことを知ったんだ。それは素晴らしいことだよ。さぁもうすぐ朝がくる。地球に帰ろう。」
また、辺りが光に包まれた。真理は、リルルと握手をして、そっと目を閉じた・・・・・・・。
ふと気がつくと真理は、病院のベットにいた。「あれ、私、いつの間にかに寝ちゃったんだろう。そうだ!幸せの花の種。」そう思い、種を探したがどこにもなかった。「もしかしてあれは、全部夢だったのかなぁ−。」でも、真理は、全部信じることにした。サンタクロ−スに妖精の国、そして幸せの花・・・・・・。ガラガラッ。その時、ドアが開いてお母さんが入って来た。
「おはよう真理。ハイッ。クリスマスプレゼント。」
そう言ってリボンのついた包みを真理に渡した。
「あっマフラ−。」
中には、色とりとりの毛糸で編まれたマフラ−が入っていた。お母さんは、そのマフラ−を真理の首にかけると言った。
「早く元気になって、このマフラ−して学校に行かなきゃね。」
真理は、元気に頷いた。そして、心の中で思った。幸せや喜びって目には見えないけれど、もし形があったらこのマフラ−みたいに柔らかくて、ふわふわしていて、そしてとっても温かいんだろうなと。その時、真理は心に幸せの花が咲いた。 


村松麻衣子