■1.31
ある朝早く、携帯電話が鳴って、寝ぼけながら通話ボタンを押すと高校の時からの親友の声がした。
「テレビ見て。トクダネを、早く!」
言われたとおりにテレビを付けて、小倉さんの顔を見つめていると、電話の主から「だめだ…終っちゃった」とよく解からない事を言われた。
見れば、小倉さんの髪型はいつもどおりキチンと様子がおかしかったし、なんだかさっぱり意味が解からなかった。
えー。なにがー?と寝ぼけたままの声で言うと、"高校の時仲良くしていた同級生が人を殺したとテレビで報道していた"というのだ。そんなばかなぁー。火サスや土ワイじゃあるまいし。本当ならワタクソ、船越栄一郎と二人で真犯人とか探さなきゃなぁ。
居間に行き、新聞を見たら、本当の事だった。
名前も、住所も、年齢も、全部全部、人違いでありようがなかった。
殺人事件なんかがあると、テレビでは興味本位に経緯や周囲の評判などを聞きほじってくるけれど、そんな時いつも、歯茎の長いおばさんや、赤ら顔のおじさんが、「いい人だった」「信じられない」などと口々に言う。場合によっては涙を流してコメントする人もいる。「普通のいい人だったのに」
うそつけと思ってた。なにをキレイナ話にしようとしてるんだ。って。だってそんな普通じゃない事は、普通じゃないから起せるのが大半のことだろうし、テレビも紙媒体も、誰かの意図が入り込む限り、大きくも小さくも、かならず情報は操作されている物だと思っているからだ。
だからいつも思ってた。うそつけー。
だけどね、歯茎の長いおばさんも、赤ら顔のおじさんも、ほんとうにほんとうにゴメンナサイね。おたくら間違ってませんでした。正しい。
犯人とか加害者とかと呼ばれ、たった今警察で過ごしているあいつも、本当に優しくて、控えめで、イジメなんて大っきらいで、真っ直ぐで照れ屋な本当に普通の男の子だったです。
そういう人が何故と思うけれど、新聞やネットを見た限り、自分や他の友達が、普通の幸せを感じたり、自由に生きたりしている間、かなりの負担を背負いながら生きてきたようでした。
重たくて重たくて、逃げ道なんて何処にもなかったんだろうと思った。どうしようもなくなって、病気のお父さんを殺めてしまった。なにやってんだよ。わけわかんないです。悲しいです。悲しくても何も出来ないです。
そうして、知ってしまった日から、一日中学生服を着た彼が真っ白な歯を見せながら私に微笑むのです。
なんでそんな事になっちゃいましたか。今どこに居ますか。どうしてますか。たべてるの?眠れてるの?今どんな気持ちでいるの?どうして踏み越えてしまったの?なんにも、一個も解かんないです。
■1.18 「湯のみに入れ歯をひたしておくのはやめてください」
お婆さま、痩せた痩せたと言っていたのに、一向にその気配が見えなかったのは、歯茎のことだったのですね。そうなのですね。
最近よく、テレビを見ながら、入れ歯を出したり引っ込めたりする婆さんの姿をよく見かけます。なかなかキャッシュディスペンサーみたいだのです。
それは別々に住んでいる間からやっていた日常的な事で、無意識なのだと思うのですが、そこに、あげ山&猫軍団が帰還した事で、ちょっとした争いが発生しておるのです。
ワタクソあげ山が一緒に暮らしてきた"ぽて(あげ山家飼い猫)君"は6キロの波打つボディーから簡単に推測できるとおりの食いしん坊さんだので、何かたべていると必ず近くに寄ってくるのです。あげないと、意地になって欲しがる根に持ちファイターなのです。
婆さん入れ歯出す、ぽて(飼い猫6キロ)入れ歯を食べ物だと思いこみ、その都度婆さんにジャンピングボディープレス&入れ歯に猫パンチ、婆さん唸る。
婆ちゃんが、居間に出てこなくなったのだ。
■1.15 「誰かさんのおきみやげ」
引越しをする最後の日、ほとんどの荷物を車に詰め込んで、あとは細かい所を残すばかりとなったとき、ふと、かもいに差し込んだ猫じゃらしが目に付きました。
それは、テーブルの上や床に置いておくと一瞬で壊されてしまうからで、かもいに差し込んで置くのがいつものことになっていたのでした。
それを手にとり、ゴミ袋に入れた時、なんとなく「ああ、他にもなんか入れたりしてるかもしれないなぁ」なんてことを思い、ふとかもいの中を探り始めました。
その作業はなんとなく、子供の頃やったことがある、ソファの奥に手を入れ小銭を探したりしたアレに似ている気がしました。
探り初めてすぐ、猫じゃらしから50センチ程はなれたところに、なにかの紙が詰まっていることに気がつきました。ホコリと一緒に取り出すと、それは茶色い紙切れでした。
わら半紙を8つに折ったその紙には、「新井さん」と書いてありました。キチンと見ると、茶色いのは紙の元々の色ではなくて、年月がそうさせたようです。
開くと、紙には「昭和54年度平山地区連合運動会」と書いてあります。54年度!
所々、あながあいていましたが、どういう競技があったのか興味深く拝見させてもらうと、新井さんの名前は綱引きの欄に印刷してありました。
なんでそんなものを、かもいの中なんかに押し込んでおいたのか解からないけれど、こんな日の為へのちょっとした悪戯心だったとしたら、なんだかちょっと良いなぁなんて、生きているのかどうかも解からない新井さんと言う人に、興味が湧いてきたのです。
■1.11 「インターネットンつながりました」
やっと回線つながりました。
随分ギリギリ(深夜12時)で引越しを終えて実家に戻り、数日が経ちました。まだ家の中にも物置にもパパ山さんのガレージにも、ダンボールが積みあがっていて不便ながらも、なんとか生活できるようにはなりました。
自分も相当に器用な方ではないけれど、感情を外に向ける事ができないパパ山さんに比べれば、うんとマシだと思っているのですが、婆ちゃんに言わせると、ここ数日のパパ山さんはニコニコと嬉しそうなのだそうです。
あげはタソには、どうみても仏頂面にしか見えないのですけども、「だから一日に一度はパパと一緒にご飯を食べてあげて欲しい」と言うような事を言われました。ここに住んでいた頃は、一緒に食事した事なんてほとんど無いのに。
本当の事を言うと、もうずっと昔、あげがもっともっと世間知らずで社交的だった頃、出て行けと怒鳴られ、外に部屋を借り、そのまま今に至ります。家もあの人も大嫌いでした。
家出同然で外の世界に飛び出していった放蕩娘を可愛いと思えるほど、そういう不器用な人間を可愛らしいと思えるほど、お互い独りづつで生き、お互い歳をとったという事なのかもしれません。
だから言ってみたんです。10年以上ぶり、何度目かの言葉。
おはよう。
「あぁ」と言われました。婆ちゃんが言うように、ほんとにちょっと微笑っている気がした。
■1.03 「引越しやに頼みたかったのに」
パパちゃんこと、あげ山家父な人は、普段家に居る時には「うん」とか「ああ」程度しか喋る事ができない全くの働くおっさん人形なのですが、なんかあると頼みもしないのに張り切っちゃう周囲の人間を困惑させるタイプなのです。
今回の引越しが延びたのも、ネット環境が整わなかった事と(えー!)パパちゃんの都合に原因があったりします。
「おれ、4日しか空いてないから…」
えー!いつ頼みましたかよ!
「4日にレンタカー借りるから」
えー!0123したいし!
なんか、電話でのこのやり取りが、引越しが4日に決まった瞬間だったみたいです。
ところが昨日電話があって、「明日行くから」とか。
引越しは3日になったみたいです。
(´Д`)
今日の昼頃に、まだ荷物もまとまりきらない状態で片付けながら待っていると、外でトラックのバックする音がしたので、見てみると、そこには予想を遥かに上回る小さなトラックが!(案の定乗せ切れませんでした!)
「俺、クーラー外せる。」
えー。外すはいいけど、付けられるのですかよ?!
「会社の、俺やった。」
ちゃんと喋れよ!53歳!
持ち前の俺が!俺が!精神で、クーラーを分解し始めるパパちゃん。硬くなりつつあった5M程度のホースを本体に付けたまま、暫く悩んでいます。
「俺が外からホース押すから、部屋の中から引っぱって」
え。ちょっとまって。この家ボロイから、あの、
「押すぞ」
あ、待って!ほんとに、壁が!ちょっと!
今日この部屋は、生まれたばかりの30センチ程の壁の穴で宇宙(コスモ)と繋がった。
■1.01 「あけまして」
おめでぃとございます。新年の挨拶には、新しいサイトのデザインでと思ったのだけれど、色の取り合わせなどが気に入らず、結局おめでとうをこのままいう事になりました。わお。
TVのえらいおばさんが、"いつまでにそれを成すのか年齢などの期限をキッチリ設ける事が人生の成功に繋がる"みたいな、ぐうたら人間からしたら歯茎を引きちぎってやりたくなるような発言をしていましたけど、本当にそうだなあと思います。引きちぎることはやめないつもりですけども。
期限が決まっていてもどうにもならない人間もいたりしますね。
12月30日で立ち退き予定でしたが、引っ越してません。立ち退き予定でしたが。
■12.18 「母ちゃんたちには内緒だぜー」
運べる物だけは運んでおこうかなぁと、引越しの荷物を積めるだけ積んで、実家でないとできない作業をしてきました。
12月という事で、町なかは穴ぼこだらけで、傍を通るたびに車線は減少して、イラついたドライバーが起した事故で更に渋滞。横田基地の前では、凹んだ車の前でお巡りタンとタイソンみたいな軍人3人がモメモメ。車は結構アレだったけど、軍人走って帰るのかなあ。と思ったら、頭からファミコンウォーズのCM音楽がぐるぐるととぐろを巻きだしました。GBウォーズもでったゾ。
いい加減一人ぽっちにも飽きてきたので、長いことずっとサイトにメッセージを送りつづけてくれていて最近一緒にオンラインゲームをやったりするようになったお友達の人にお電話をしながら、実家に辿り着くと、なんと、ワタクソ専用駐車場が無くなっていました。
あれ、早く帰ってきなってゆってたんじゃなかったのですかよ。
もっとビックリしたのは、婆ちゃんの後姿がチラリズムしていたので、クラクションをピピと鳴らした時に、振り返った婆ちゃんが爺ちゃんになって居たことです。
なにそのGIカット!あと、なんか顔むくれてない?
「上の美容院で、歳で来るのがおっくうだから短くしてくれってゆったら、やられたんだぁ。 顔は畑してたらチクッとしたんだい('A`)」
いつになく、意気消沈した目の前の寺内貫太郎を見つめながら、困惑する女心を感じた。
■12.12 「クリスマスまであとちょっとですかよ」
最近引越しだとかの関係で、実家と電話をする機会が多いのですです。
用件だけじゃアレだからっつんで、ちょっと関係ない会話なんかもしてあげつつお話すんですけども、どうも最近婆ちゃんがみのもん以外の人物に心酔している予感。
ある日
「あ、婆ちゃんその日居ないで!」
あんでよ?
「田島さんが旅行どうですかっていうからよう、バスで行って来るだい。その日は来ないで。」
(´Д`)
またある日
「腸に出来た腫瘍はよう、やっぱり宿便だったみたいだい。」
え、お医者に言われたの?
「違うだよう。田島さんに聞いたら、痛いウンコが出たことがあるっていう話でな、宿便じゃないかっていうんだいな。だからよう、」
そんな素人どうしで適当なこと!
「だって田島さんもそう言ってら?」
(´Д`)
田島さんて誰。
■12.11 「殺されない程度にがんばろうと思うのです」
多摩地区の林真須美さんこと裏の●口さんと、普段は敵対関係にあったはずの同じ敷地内の貸家の一軒を借りて造園業を営んでいる迷惑駐車の大好きな職人二人が、なにやら立ち話をしていたので、「引越しの相談ですか?大変ですね、旦那さんエンジニアなのに。」と、軽くイヤミを言って家に入りました。言い逃げです。
旦那は、カラシ色とウンコ色の交じり合ったセーターに、タックの入ったデニムを履いて、いつも自転車に乗って冬以外は明るいうちに帰って来ます。●口家でいうエンジニアとは、いったい何を指すのか。
自分から攻撃したのは初めての事だったので、とってもドキドキしましたが、こうしてバトルができるのも、後半月を残すばかりと考えると、ついこの間まで「あの時、警察に突き出しておけばよかった!」と鼻息を粗くしていたワタクソだというのに、今しか無いんだなぁという気持ちになるから不思議です。
次に対峙した時にも、おすぎになったつもりでズガンと。
■12.08 「脱がない」
ヤケにサイレンがうるさいなぁと思ってカーテンを開けたら、すぐ目の前の、大家さん建築中の建て売り住宅群の中の一軒が火事でした。
新築が火事だなんて、すてばちになった家主がのた打ち回りながら屋根から家財道具だとか餅だとか投げるかもしれない。泣きながら止める嫁と柱の陰でほくそえむ連れ子。やあ、ちょっとう、そんなの見に行かないわけないではないですかよ!
ヤジウマ根性全開で外に出ると、人だかりの中、こちらを見た数人がギョッとした。
わ。やべ。このトレーナー穴開いてたんだ!
頭はモサモサだったし、肌触りの良さから数年愛用してどんなカワウイパジャマを中に着ようがもうコレじゃなきゃダメなのアタイ!という域にまで到達している襟が伸びて左腹部に穴が開いてしまったけれど着ていたいトレーナーを着用していたので、まるでルンペンを見るような目で見られましたが、今日も着ています!
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