ヴィレッジヴァンガード
のジュークボックス(#03)


何かが違うと考える頭は真っ白に



例えば君は風水に凝っていて、対人運をアップさせるためにカーテンの色を変え、ベッドカバーの柄を変え、吉方に間接照明などを置いてみて。するとどうだろう、いつしか君の頭の中からは、僕の存在はきれいさっぱり無くなっているんだな。そして何年後かのある晴れた日の午後、どこかの町でふいに君は僕の事を思いだすんだよ。
「ああ、いま思えばあの人は私にとってどうでもいい人間だったんだわ」、ってね。

動かない僕を旅出たせる何冊かの小説を改めて見返す事も難しく、視線は同じ箇所を何度も彷徨ってはツルツル滑って、やがて行間に墜落した。しおりに描かれたパンダはそれを悲しみ、蔑む。ような気がする。
僕の物語は自宅と職場を黒煙を上げ往復し始め、民家に火の粉を撒き散らしては、ちょっとしたボヤ騒ぎを引き起こす。ビニールの焼ける匂いが僕を嫌な気持ちにさせるのだが、それがまさか僕自身のせいだなんて事は夢にも思わない。

そんな旅。これも旅だ。――旅か? はたして

かつて僕の友人は、普段利用しているバス停が自宅から少し離れていたため、深夜、バス停の標識を少しづつ家に近づけてみようと思いたった。やがて彼は、毎夜こっそりと家を出てはバス停へと出向き、コンクリートの土台を引きずって少しづつ少しづつそれを移動させている所を、警官にみつかり補導される。当時そんな彼を僕は笑い飛ばしたものだ。そして時がたち大人になった今、僕は彼を笑えない。彼は動かなかったのではなく、動かなくてもいいようにとりあえず行動を起こした。僕は分岐点が近づいてくるのをずっと待っている。ただ待っている。


■#03■
君は空を飛んで、
陽気な場所をみつけに
ぼくをおいて行けばいい
だけど空の上からじゃ 何もはっきり見えやしない

ぼくも空を飛んでみようかなんて
―RCサクセション「うわの空」







回。