それに
今日はいい天気

また愛機が最適化されるのを見ていたんだよ。そんでそうゆう時ほど最適化されてない身の程を知るっていうか。この間になんかする事なかったのかよとねぇ、思って。飯作って食ったりとかさぁ。で僕は想像の中の煮えたぎった鍋にスパゲティを一掴み、ってこんな小説あったなぁ、とか。あぁ、村上春樹だね、とか。階下に住む新婚家庭の奥さんは今日4度目の掃除機タイムへ突入。畳に擦りつけられるヒステリックなヘッドの音で彼女の感情は痛いほど僕に、って訳では当然なくて。結婚するならカーテンを静かに閉める女性にしようと。


「はいもしもし、あっサトちゃん。いい所にかけてきたよ」
『えっ何?』
「俺は今、人生の暗闇を覗いていたところなんだよ」
『何。ウツはいってんの?』
「や、自分が鬱状態であることを人に言ったりする奴は俺に言わせりゃ躁病だね。俺はただ単に俺自身を最適化したいんだ。そしてそれにはキャンプと旨いカレーが必要なんだ。率直に言おう。俺をキャンプにさそうべし、とな」
『この前まで、キャンプとか行く奴はブタの糞だとか言ってたのに』
「良薬口に苦し」
『で、そのキャンプは誰が行くの?』
「君とわし」
『誰が車出すの?』
「君」

『それキャンプかぁ?』



というわけで今日はいい天気だ。とても気分が良い。神の意思を感じるなぁ。神といってもグレート義太夫似じゃない方のね。今日はもうなんでも許してしまえる気がする。僕が以前、「クリスティーナ・リッチって可愛くなったよね」と言ったときに、「えっ、じゃあ安達祐美とか好きでしょ」って君がほざいたあの一件、あれもこの際水に流すよ。


  僕は笑いたい。お日様がでると、さ
  勝手に笑いが込み上げてくるんだ
  とってもいい感じで事は進んでる
  恋をしてるんだ。それに今日はいい天気


そう、これは治療行為だ。



で、カレー粉を忘れちゃったのだよ。
「どうすんのよ。このまわりコンビニとかないよ」
「悪いが君は先ほどの御食事処でカレー粉を分けてもらってきてくれんだろか」
「やなこった」
「なんでだよ。ここは俺を助けると思って」
「あそこどう見ても釜飯屋だよ」
「カレー粉ぐらいあるよ」
「わかりましたよ。まったく。うんざりだ。長谷川町子もびっくりだな」


彼女が戻るまでのあいだにカレー作りは滞りなく進んだ。
「ただいまー。無いってよ。カレー粉」
「嘘!」
「ほんとだよ。だから醤油と砂糖もらってきた。もういいじゃん肉じゃがで」
「君はなにゆえここで肉じゃがを食わせるかね」
「人生にはこうした局面も必要ですよ」
「……そういやここって植物園あったよねぇ。ちょっくらスパイス探してくるわ」
「お前はミスター味っ子か」


植物園を抜けた時に漂ってきた肉じゃがの香り。その時僕の心情はさながら家路を急ぐ子供らのようだったよ。
「どうすか? 味は」
「中途半端に旨くて腹が立つ」


「では日も暮れたことだし、キャンプらしくレクリエーションを繰り広げよう」
「ふたりでな」
「じゃあ、いくよ。銭湯の湯船につかっていたら嫌なものベスト3」
「えっ。コサキン仕立て?」



「ねぇ、サトちゃんって兄弟いたっけ?」
「ん? 弟がひとり」
「一人で部屋にいるのって苦痛なほう?」
「うーん……それほどでもないかも。本とか読むし……なに?」
「……いや、いいす。おやすみ」
「……あいよ。おやすみ」
「……」
「……」


「あのさぁ、カーテンをさぁ」
「なんなの!?」


帰り道。僕はドライブイン『みちしお』にてカレーを食っている。中途半端に旨くて腹が立つ。
ところで、僕の最適化はすっかり終わったらしい。そもそも最適化が必要だったのかも今となっては曖昧なのだが。まぁ。いい。
彼女は、僕が案の定カレーを頼んだので、何か言いたそうな微妙な笑顔を浮かべてこちらを見ている。僕はその顔を見ながら、僕ん家の下に住む新婚さんが登っているであろう険しくて高い山を想ったんだ。


                                 THE BEATLES / GOOD DAY SUNSHINE





る。