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 「Jazz Bar Solitude」

「失神」

そのお店の入り口はひっそりと在る。

札幌市中央区南3条西4丁目、

注意しながら歩かないと気づかぬうちに

ドア前を通り過ぎることもあるだろう。

1982年開店、札幌ジャズバーの草分け、

「Jazz Bar Solitude」。

地上の入り口ドアを静かに開けて

お店へと続くやや狭い階段を下ると

グッと落とした照明の中に

黒のストゥールが13脚。

正面方向へへスッと伸びたカウンターが

美しくそして静かに浮かび上がり

先程までいた外の騒々しさとは対極的な

静けさに満ちた空間が現れる。

最奥の壁際には大変年季の入った

1台のピアノの姿もうっすらと見える。

カウンター内ではやや白髪まじりのオーナーが

これまた静かに一人グラスを磨いている。

店内に設置されたATC製スピーカーからは

「スウーナー(失神させる人)」の名を持つ

米国の「ザ・ヴォイス」こと

フランク・シナトラの美声が

お客はまだ私だけのしんとした空間を通して

甘くまろやかに耳へと聞こえ響く。

カウンターの手書きによる但し書きには

どうかお静かにお愉しみ下さいとあり

音楽とお酒をじっくりと愉しむ方のための

配慮はオーナーの取り組み方を物語る。

 

「北上」

清潔感ある白ワイシャツに黒ベストが似合う

このオーナーバーテンダーは

ジャズ喫茶の聖地である岩手北上のご出身であり

かつてご自身もビッグバンドでドラムを

叩いていたご経験を持つ八重樫 繁男氏。

八重樫さんはこちらから話しかけないかぎり

余計な話など持ち掛けこない一見寡黙な方だが

好きなジャズの話やお酒の話になると

ご自身の思いや考え方を率直に話してくれる方であり

決して堅物ではない好漢なのである。

20数年前にお店をオープンした頃には

札幌でも明白に「ジャズバー」と名乗ったお店は

ここ「Solitude」のみであり

当時の札幌では「ジャズ」などまだまだ馴染み無く

お客さんは一部のジャズ好きなご年配の方が

やはりその中心であったそうだが

ここ最近ではCMソングなどの影響もあり

20代、30代の方を中心に若者層の間でも

ジャズに興味を持つ層が大きく拡がり

お店へいらっしゃる方も増えており

ジャズやお酒についてアドヴァイスする機会が

だんだんと増えつつあるそうだ。

また最近「吉兆宝山」や「天使の誘惑」、「春雨」など

本格焼酎や泡盛も取り扱うようになったことで

焼酎のオン・ザ・ロックを呑みながら

ジャズヴォーカルに聴き入る方も増えたとのこと。

お気に入りを聴きながら鮭とばを肴に

芋焼酎なんて機会もこれから増えそうである。

さてと今宵の最後に店名と同名、ジャケット写真もイカす

ビリー・ホリデイの「Solitude」を聴きながら

仕上げの一杯を呑むとしようかな。

 

 

「Jazz Bar Solitude」

札幌市中央区南3条西4丁目

ラーメン源龍横 B1F

011−231−2919

最寄り駅

札幌市営地下鉄南北線すすきの駅より徒歩3分

お店一口メモ・・・

札幌の老舗ジャズバー。

どちらかというとバーに通い慣れた

お一人のお客さんが多いですが

バー初心者の方でも気取らずにその旨を

八重樫さんへ伝えることで

お酒や音楽の佳きアドヴァイスを

いただけることと思います。

周りのお客さんの邪魔にならない程度に

会話も愉しむお店ですので

その店はどうかご配慮下さい。

チャージ1,300円、

カクテル700円〜程度となっています。

 

 

DRINKER'S COMMENT
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Thielemans
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私がはじめて行ったBAR。

それはもう20年も前になろうか・・・。

『Jazz Bar Solitude』

南3条界隈は今より活気があり、

それこそジャズ喫茶、

Jazz Barとか当時の呼び方ではそう・・・

cafe berとか。

遊んでいる男も女も皆大人に見えた。

今よりずっと情報とか物とかは少なく。

しかし、それでも男も女もカッコイイ人達が

遊ぶ店がたくさんあったように思う。

そんな時代の忘れ物?かな?この店・・・。

20年以上通っています。『Solitude』

薄暗い狭い階段をねじれながら降りていくBAR。

そこには酒を飲むのに最低必要程度な照明が

花梨で作られた1枚カウンターの手元だけを

静かに照らしている。

手作りであろうか大きな真空管のアンプの光が

流れるJAZZとマッチして心地よい。

余計な会話は要らない。

静かに時間が過ぎ

気がつくと注がれたウイスキーの

グラスは次の酒を待ちわびているようだ。

20年もこのカウンターに座ってきたのか。

静かに。

そうだ、初めてここに来たのがBARの始まり。

先輩に連れられて大人の仲間入りをしたあの日。

どこか落ち着かなく

勝手が判らないまま

何を飲んだんだろうあの日・・・覚えてない。

思い出せないが

その日一つの事件がこの店で起こった。

と言うか私にとってだけ

事件だったのかもしれないが。

この店のバーテンダーにとっても

お客達にとっても事件と言うほどの事では

無かったのかもしれない。こんな話だ。

もう随分とお酒も定量に近い一人の

酔っ払いがツカツカとそのねじれた階段を

舞い降りてきた。

どうやらその酔っ払いも

勝手が判らなかったらしく

何かを注文しながら無口なバーテンダーに

話しかける。

しかしここの無口なバーテンダーは

徹底的に無口である。

もしかしたら日本で一番無口な

バーテンダーかもしれない。

機嫌をそこねた酔っ払いは文句を

ブツブツと言いながら何かを飲んでいる。

それでもまだバーテンダーは無口のまま・・・。

子供の私は少し緊張していた。

まわりの客達はあまりバーテンダーの無口は

気にならないらしい。

と言うより それが心地良い と

感じているかのようにも見えた。

しかしその酔っ払いにだけは心地悪いのか

相も変わらずづーっとブツブツ文句を言っている。

わたしの隣に座っていたその当時の年の頃なら

20代後半くらいのおにいさんが

突然その酔っ払いに対してこう言った。

『気に入らないんなら金を払ってさっさと帰りな』。

私は口から酒と心臓が飛び出しそうになった。

そうかこれも大人の飲み方か!感動した。

それからその酔っ払いは勘定

ブツブツ言いながら済ませ

ねじれた階段をコツコツと帰っていった。

また何事も無かったように静かに

JAZZとタバコの煙と

ライムの香りが入り混じるBARにもどった。

それ以来わたしは20年間このカウンターに

通い続けている。

静かなこのBARで20年間の

静かなドラマを見てきた。

私にも20年間というドラマがあった。

そしていつも変わりなくこの≪孤独≫という名の

店は私の中の≪孤独≫を

静かに受け入れてもくれた。

今日は私の大好きな 《BILL EVANS》が

かかっている。

≪alone≫