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  AsiaWay HeadLine - AsiaNewsTopics  [2001.6.20]
 ★日本で報道されないアジアの動向(1) 〜上海協力機構と中央アジア・新疆ウイグル自治区・その1〜
 2001年6月15日中国上海において上海サミットが開催され、その席上参加6ヶ国の首脳により「上海協力機構」の創設を決定する声明が発表された。加盟国は中国・ロシアとカザフスタン・ウズベキスタン・キルギスタン・タジキスタンの中央アジアの4カ国で、同機構はテロ活動・民族分理主義・宗教過激派に共同で対応していくとある。またカザフスタンの提案で、経済分野における長期的な多国間貿易協力要綱の策定を検証する。
 上海サミットはもともと96年に軍事分野、特に国境地域における信頼関係の強化を目指し中国・ロシア・カザフ・キルギス・タジクの5カ国が上海において会合を持ったことに由来する。本稿はその5カ国の会合がどのような各国の事情のもとで協力機構を設立するに至ったか、殊に中央アジアではどのような背景で創設されたのか、また中国の新疆ウイグル自治区にはどのような影響を及ぼすのかについて触れたいと考える。
 
 ●「上海協力機構」と超大国外交
 「上海協力機構」は中国・ロシアの2大国にとっては、冷戦以後唯一の超大国として存在感を増すアメリカへの対抗の意味を持つと考えられる。特に人権問題や台湾問題でアメリカとの潜在的な対立を抱える中国にとっては、国連安保理の拒否権を保持する大国ロシアとの外交上の連携は重要な意味を持つと言える。一方でロシアも冷戦終結後もアメリカとの対立を完全に解消できずにおり、殊に同機構の存在は近年アメリカが急速に自国の影響力を拡大しつつある中央アジア諸国を巻き込んだという意味では、本来ロシアの影響圏である中央アジアのロシア離れをを防ぐという意味でも重要である。また声明では中露両国が足並みをそろえアメリカのミサイル防衛構想(MD)に反対する一幕もあり、今後同機構が米国及びその同盟国にとって国際社会でどのような位置付けをするのかは我が国の外交にとっても重要なポイントである。

 ●上海協力機構の実質的意義 〜国際テロ・民族分裂主義・宗教過激派に対する共同対処〜
 以上において同機構が国際社会において唯一の超大国アメリカに対処する中露の施策だとは述べたが、しかし「上海協力機構」の本来の目的はあくまで国際テロリズム・民族分裂主義・宗教過激派に対する共同対処であると考えられる。殊に同機構の加盟6カ国は、体制の安定という統治上の根本問題において深刻な問題を抱えており、その解決において6カ国の協調は極めて重要な意味を持つ。具体的には声明にある「国際テロリズム」とはおそらくロシアにおけるチェチェン人との紛争によるテロリズムを意味し、「民族分裂主義」とは中国新疆ウイグル自治区内でのウイグル人による分離独立運動を意味し、宗教過激派とは中央アジア諸国に浸透しつつあるイスラム原理主義を意味する。同機構はあくまで、これらの不安定要素に共同で対処することが目的だと考えられる。

 ●中央アジアの事情 〜イスラム原理主義とテロリズムへの共同対処〜
 では具体的に、中央アジアにおいて同機構はどのような意味を持つのかを検証していきたいと考える。まずは何故、中央アジア諸国は共同してイスラム原理主義に対処しなければならないのか。理由の一つはこれらの諸国が旧ソ連より独立した際の様々な事情である。例えばその一つが旧ソ連より引き継いだ複雑に入りくんだ国境線であるが、本来別々の国家として機能するようには引かれておらず、場所によっては村の中心部を国境線が走っているなどということが多々ある。また新しく出来た国境線の管理もゆきとどらいておらず、先日まで容易に往来していた地域間を、独立したとはいえ急に国境の名の基に往来を制限すれば、経済的にもその他の理由でも無用の混乱を起こすという、特殊な事情がある。また中央アジア諸国は、共に民族の母体がトルキスタン系民族に由来しており(タジクのみペルシャ系)、言語的にも各言語間の相違は日本の方言程度であり、イスラムを信仰している点やそのイスラム信仰が旧ソ連統治下で否定されたなどの同じ経験を持っている事など、同地域が独立後もなお共同生活圏を保持していると言える。そのような事情ゆえ、同地域内では国民の移動交流も盛んなため、国際的なテロリズムやアフガニスタンから流入するイスラム原理主義には共同で対処せざるを得ないという事情が存在するのである。
 また各国個別にも事情があり、例えば小国のキルギスタンやタジキスタンは、その国力や人口及び経済規模にゆえ、国内に大規模な軍隊や警察力を保持することがもともと困難であり、もし大規模な組織や国家の裏支援を背景に持つテロリスト集団などの侵入を許せば、前出の国境線との兼ね合いもからみ、問題への対処が困難であることは容易に想像ができる。例えば数年前にキルギスで発生した日本人誘拐事件はその一例である。ゆえにこれらの問題を未然に防ぐためにも、隣国との共同対処は不可欠であり、同じく国内にイスラム原理主義の飛び火を恐れる大国の中国・ロシアと行動を供ににすることは重要である。また、中国・ロシアにとっても、自国内の原理主義は中央アジアを媒介として侵入してくるがゆえに、この地域の国家を積極的に支援して、原理主義の動向を探ることは重要なこととなる。ここに、上海協力機構の設立の意味がもたらされる。
     次回に続く・・・。
 ★日本で報道されないアジアの動向〜次回は上海協力機構と中央アジア・新疆ウイグル自治区・その2〜