カスピ海モンスターズ



 カスピ海モンスターズ、それは旧ソ連がカスピ海で開発していた空を飛ぶ船WIGです。この兵器が、西側の情
報筋で騒がれるようになったのは1970年代からで、ルン級の想像図が出たのはジェーン年鑑1983年版から
でした。しかし、こんな門が本当にあると思わない人がほとんどでした。それも、その寸法が長さ91.4m、幅4
0mという化け物だったからでした。こんなものが飛ぶわけがない!と誰もが考えたのです。が、ソ連の軍事力
1986年版にもオリョーク級の想像図が掲載されていたため、どうもあるらしいという空気が流れ始めたので
す。
ソ連の軍事力1986年版には、ルン級の想像図が書かれていたがその想像図が飛行中ミサイルを発射してい
るシーンだったため、また怪しまれる結果となりました。
 ところがソ連が崩壊する直前の1991年9月、ジェーン・デクフェンス・ウィークリー誌がカスピ海モンスターズ
の伝説が確認されたとオリョーク級WIGの写真を数枚掲載したのだ。その姿は想像図そのままでした。翌年に
はルン級WIGの存在が公開され、テスト中のビデオも公開されたのです。西側関係者は、本当にこんなものを
開発していた事に、そして実用化寸前まで行っていた事に驚きました。

 それではWIGの原理について説明してみます。
 飛行機が着陸する際、機首を上げて車輪を滑走路へ設置させる。この時、滑走路と翼の間は空気圧が高くな
るため揚力が大きくなり着陸できないのです。そのため接地後機首を下げるのです。この効果を地面効果と言
い、飛行機の着陸に邪魔なこの効果を逆に利用すれば地表すれすれを飛ぶ事ができるのです。

 原理が判っても、そう簡単に実現する事はできずアメリカは開発を中止している。しかし、ソ連は諦めなかった
のです。数々の小型WIGを作りテストを重ねた結果、小型よりも大型の方が航行性や操縦性が優れていると確
証したために、いきなり500t級のWIGを試作したのです。これがKMと呼ばれるタイプです。
 1963年、中央設計局プロトタイプ製造工場に指定されているボルガ工場で作られ、テストが開始されまし
た。その大きさは長さ92m×幅37m×高さ22m、離水重量544tというまさに”カスピ海の怪物”でした。



KMの機首には推進/離水兼用ターボジェット(1基推力10t)が片側4基、計8基が並列に装備され排気口に
は0°〜−15°ほど動く可変ノズルがあり、離水時に主翼前方へ排気を送り込み、翼面下の空気圧を高め、
艇を浮かせるようになったいました。
 このKMの初飛行では、高度3〜4mを50分飛行する事に成功しました。その後1980年に事故により失わ
れるまで各種テストに使われ、貴重な情報を得ている。

 このKMのテスト結果をふまえ、実用化WIGが建造されました。それが中型WIGオリョーク級(NATOコードネ
ーム:オルラン)です。



このタイプは長さ58m×幅31.5m×高さ16m、標準離水重量110t(最大125t)とKMに比べずいぶん小
型になりましたが、艇体構造重量が過剰で搭載量が少なくなったと言われますが、貨物庫は長さ25m×幅3.
2m×高さ3mありBTR−60装甲車が2台楽々収納できました。
このタイプは、離水用にターボジェットを2基艇首に装備していますが、航行は垂直尾翼頂部の2重反転式ター
ボプロロップで行われる。これにより最大速力350kmを発揮し2000kmも飛ぶ事ができたのだ。
 1972年、プロトタイプ1号艇が完成し各種テストが行われました。離水を初めて最適巡航高度2mまで1分半
で達し、90°旋回半径は50mでした。当初120艇もの建造が計画されていましたが、3艇完成したところでソ
連崩壊してしまい計画は頓挫してしまいました。なお、オリョーク級軍事関係部品を取り除いた民間用も開発さ
れていて、艇体材料も船舶用アルミ合金から耐腐食アルミ合金を複合材料に替えらたことで、艇体重量gは軽く
なり、なおかつ排水量航行から飛行状態までの段階で重量を減らす特殊な装置により、最大揚抗比を1/3も
改善する事に成功しているが、こちらは量産するまでに至らなかった。

 次に開発されたのが、ミサイル搭載WIGルン級(NATOコードネーム:ウトカ)です。



このルンは、KMを元に開発された大型WIGで長さ73.3m×幅44m、重量350tという怪物であり、1987
年に完成している。特徴は上部に搭載されている対艦ミサイルSS−M−226発を発射機ごと装備した事で
す。この発射機がむき出しに取り付けてあるため、かなり抵抗が大きかったものと思われる。
 また、KMとは違い艇首に離水/巡航ターボジェットを片側4基づつ並列に装備している。このターボジェット
は推力13tと言われ、排気口にはもちろん可変ノズルが装着されています。このエンジンによりルンは速度50
0km、航続距離2040kmの行動力を発揮しました。
 レーダーは、垂直尾翼に対空/対水上レーダー、航海レーダーが装備され、ECM装置も装備されていたの
です。
なお、ルンには攻撃型と救難艇型の2種類があり、救難艇型にはもちろんミサイルは搭載されていません。

 最後に開発されたのが捜索救難WIGスパサテルです。
のこスパサテルには地面効果翼の上に主翼が付けらているのが特徴で、飛行機と同じように飛行できるので
す。しかし、ソ連崩壊により建造中止となり未完成のまま工場に放置されています。




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